ここまで長々と書き連ねましたが、こうして私の「第二の人生」はスタートしたのです。
そもそもビートルズの登場でロックに感化され、グループサウンズに流れ自らバンドを組んでみたりしたものの、大学の卒業以来、今までギターに触れる機会すらなかった私でのすので、ジャズギターの弾き方に関しては素人も同然。それを認めてしまうのも癪ですが、仕方がありません、上達のためです、初心者クラスに混じって、コードの押さえ方から学び直しました。だいたい憶えているのですが、若い頃も苦手だったB7は、時を経てもやっぱり苦手でした。ええ、体は苦手なことも憶えているものですね(笑)。
ふと周りを見ると、小指の関節に異常を訴える他の生徒さんの姿がチラホラ・・・その中にはオジサンもいます。クラスの後に話しかけると、彼(Eさん)も定年後の「第二の人生」の中で、ジャズ演奏に魅せられたということ。それからというものの、Eさんとはクラス後にお茶をする仲になりました。こうした出会いもまた楽しみのひとつですよね。
レッスンの始めのうちは基本的なコード、そして徐々にコードトーンやスケールを使ったアドリブ、という風に、実践的なステップを上がっていくような内容でした。しかし、特に始めの頃なのですが、楽譜にないメロディーを弾くというジャズ特有の演奏に不慣れなもので、どうもレッスンについて行けずに悔しい日々を送っていました。
先生方はもちろん懇切丁寧に教えてくださるのですが、出来ない自分に腹が立ち、諦めようとしている自分にも腹が立ち。これでは始める前に思い描いていた「楽しい定年後の生活」からかけ離れているのではないか、ジャズはやっぱり聴くもので弾くものではなかった、そんな考えさえ頭にチラつくようになってきて・・・いかんいかん。
しかし、目標としていたアンサンブルレッスンでも、とても「アドリブ」などとは言えない代物を誤摩化しながら弾いていましたが、そんなのも悔しい。もしかしたら人生で最後の趣味、このまま何一つ大成せず、人生を終えてしまうのか・・・なんてきっと、思い詰めた顔をしていたのでしょう、先生がレッスン後に声を掛けてくださり、近々あるコンサートにお招きくださいました。
「気分転換にどうですか?」もちろん先生も演奏するとのこと。もちろん喜んで参加しました。
コンサートは素晴らしかった。それもそう、ジャズスクールの講師はみなプロミュージシャンという別の顔もお持ちなのですから、その本領はむしろ学校ではなくこちら。ステージ上の彼らのなんと輝かしいことか。そしてもうひとつ、みな素晴らしい笑顔で演奏しているのです。本当に楽しそうだった。夏休みの子供でもあんな表情は見せないでしょう。
そしてやっと気がつきました。ずいぶん思い詰めていた私でしたが、そもそもジャズは定年後の楽しい趣味としてはじめたものです。とはいえただの趣味に終わらせたくはありませんので、これからも自分の五感との格闘の日々は続くでしょう。しかし、なんだか肩の荷が下りたような、長年勤めた会社を退職したときのような、そんな晴れ晴れとした気分でした。
ようやく、私のとっての本当の意味での定年後の人生が始まったようです。現在は週に4日のペースで通い、本当にジャズ漬けの生活です。演奏はやはりちょっとした運動ですし、そういえば帰国した娘に指摘されたメタボ腹もへこんできたような。